2021年5月、日本の農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を打ち出し「2050年までに日本の農地の25%、100万ヘクタールを有機農業にする」という野心的な目標を掲げた。食の安全のほか、気候変動への対策としても世界的に注目される有機農業だが、そのメリットはどのように引き出されるのだろうか。
本書では、土壌に関する最先端の研究や実践事例を紹介しながら、土壌と微生物、食べもの、そして気候変動や気象災害などとの関係性を探っている。土の中では、植物の根や無数の微生物、菌類が共生し、複雑な生態系が築かれている。植物の光合成によって作られるカーボン(炭素)の一部は、土中の微生物を養うために根から放出される。そのため、有機農業で土壌の微生物を増やすことで、土壌のカーボンを増やし、相対的に大気中の二酸化炭素を減らすことも可能になるのだという。著者は筑波大学自然学類卒。同大学院地球科学研究科中退。大学では地球科学(地質学)を専攻。埼玉県・東京都及び長野県の農業関係職員、とりわけ、長野県では新設された有機農業推進専任担当としての実務に従事した。2022年3月に定年退職。