海外書籍・雑誌
発刊 イギリス 2020.11
植民地時代に持ち去られた文化財は誰のものか
『博物館と文化財返還問題』
The Brutish Museums: The Benin Bronzes, Colonial Violence and Cultural Restitution
Dan Hicks 著 | Pluto Press | 368p
Contents

1.二度発射する銃
2.略奪の論理
3.ネクログラフィー
4.白人の投影
5.第0次世界大戦
6.企業による植民地主義
7.テロとの戦い
8.ベニン、ニジェール、スーダンへの遠征
9.ベニン・シティの略奪
10.民衆殺戮
11.偶像破壊
12.略奪
13.失われたものの名簿
14.武器博物館など
15.クロノポリティクス
16.宣戦布告
17.負のモーメント
18.終わっていない1万もの事件

Introduction
人類の歴史や功績を遺すうえで、重要な役割を果たす文化財。博物館や美術館で展示されることが多いが、収蔵するきっかけが、植民地時代を含めた当時の世界情勢や国家間の力関係に基づいていることも多い。そのため、時代を経るにつれて、所有や展示の是非が国家間の対立の要因となることがあるようだ。
未邦訳の英国書籍である本書では、主に英国とアフリカ国家の間での文化財返還問題を詳説。英国がアフリカの「ベニン王国」(現在のナイジェリア南部に位置していた王国)を討伐した際に多数の文化財を「略奪」して持ち帰ったことを端緒に、19世紀から現在まで続く問題を、各国政府および展示を担う博物館の立場や、「ユニバーサルミュージアム」の発想を踏まえて考察。著者は、文化財返還を渋る欧米諸国の態度に透けて見える白人優越主義を糾弾し、過去の歴史と向き合うためにも返還要求に応じるべきと主張している。著者のダン・ヒックス氏は、オックスフォード大学の現代考古学教授、ピットリバース博物館のキュレーター。芸術と文化における脱植民地化、および植民地時代の暴力的行為や収奪の歴史に関する研究を専門としている。