人類文明の歴史は世界各地に残る「遺跡」に刻まれている。遠い過去における人々の生活や慣習、大きな変革を伴う事件の経緯など、遺跡やそこに残された遺物からわかることは多い。遺跡というと、砂漠や山岳地帯など地上にあるものを思い浮かべがちだが、忘れてはならないのが海や湖の底に眠る「水中遺跡」である。
本書では、水中遺跡を調査・分析し、そこからわかる歴史的事実などを探究する学問分野である「水中考古学」について、多数の実際の遺跡や研究成果を紹介しながら詳細に解説、その魅力と可能性を伝えている。水中遺跡の代表的なものは沈没船であり、大ヒット映画にもなったタイタニック号も代表格の一つだ。遺跡の多くは断片が散らばっただけのものだが、条件がよければ、沈んだ当時とほぼ変わらない姿で発見されることもあり、地上よりもむしろ水中の方が遺跡の保存に適しているケースもあるのだという。著者は水中考古学者。高校卒業後に渡米。サウスウェストミズーリ大学卒業後、テキサスA&M大学大学院にて博士号(人類学部海事考古学)取得。文化庁「水中遺跡調査検討委員会」にも関わり、一般社団法人うみの考古学ラボを設立、水中考古学の普及のための活動を続けている。