新書・文庫
発刊 2021.12
安全保障上の危機を知らせる東シナ海の日本漁船
『東シナ海 漁民たちの国境紛争』
佐々木 貴文 著 | KADOKAWA(角川新書) | 256p | 990円(税込)
Contents

まえがき――東シナ海での出会い
序.日本の生命線
1.追いつめられる東シナ海漁業
2.東シナ海で増す中国・台湾の存在感
3.東シナ海に埋め込まれた時限爆弾
4.日本人が消える海
5.軍事化する海での漁業
終.日本漁業国有化論
あとがき――さまよう小舟

Introduction
日本、韓国、中国、台湾に囲まれた東シナ海は、海洋資源に恵まれ、日中台が領有を主張する尖閣諸島があるなど、東アジアの地政学上、きわめて重要な海域といえる。その東シナ海、特に尖閣諸島周辺で近年、中国籍の船舶が日本の漁船の操業を脅かす事態がひんぱんに起きている。どう対処すればいいのだろうか。
本書では、東シナ海をめぐる地政学上の問題を、その歴史的経緯と現状を描きながら「漁業」の視点で読み解く。日本、中国、台湾による水産資源の権益争いや、尖閣諸島をめぐる国境紛争の最前線にいるのは、日中台の漁船、漁業者である。絶大な国力をもって武力行使もいとわない姿勢を見せる中国に対峙するには、衰退産業にも位置付けられる現状の日本漁業では心許ない。それゆえ著者は、日本漁業の国有化までも提言している。著者は、北海道大学大学院水産科学研究院准教授を務める漁業経済学者。農林水産省水産政策審議会委員。専門は漁業経済学・職業教育学・産業社会学。著書に『近代日本の水産教育──「国境」に立つ漁業者の養成』(北海道大学出版会)、『漁業と国境』(共著、みすず書房)などがある。