現代社会におけるさまざまな判断や行動には「数字」が根拠になることが多い。コロナ禍でも日々の感染者数をはじめとする数字をもとに、緊急事態宣言などの対策が打たれた。しかし、数字が客観的な真実を表しているとは限らない。数字と正しく向き合うには、どのような視点を持てばいいのだろうか。
オランダでベストセラーとなった本書は、多くの数字にまつわるエピソードを織り交ぜながら、「数字=真実」という思い込みにとらわれず、物事を正しく理解し行動するためのヒントを提供している。数字には人を信用させる力があるために、意図的、あるいは無意識に自分の意に沿うように数字自体やその解釈・分析が操作されていることがある。ずさんな調査や分析のせいで誤った数字が深刻な影響を及ぼすことも。たとえば第1次世界大戦の頃に行われた知能テストで、人種や民族によって知能に差があることが結論づけられたために、現代まで差別や偏見が残っているケースがある。著者はオランダのニュースサイト・出版社「De Correspondent」の数字特派員。エラスムス・スクール・オブ・エコノミクスとティンベルヘン・インスティテュートで計量経済学の博士号を取得。またオランダ高等研究所で、ジャーナリストが科学研究・教育現場に長期間滞在する「ジャーナリスト・イン・レジデンス」を経験した。