世界的な「半導体不足」が深刻だ。パンデミックによる工場操業停止や物流の停滞により半導体が供給不足となり、電子機器や家電、自動車などの生産や輸入が滞り、品薄が続いている。企業活動への影響も大きい。このように現代社会に欠かせない半導体は、国家が覇権を狙うための“武器”にもなりうる。
本書では、米中の覇権争いをはじめとする地政学上の戦略物資として注目される「半導体」をめぐる、米国を筆頭とする各国の動向をリポート。米国は2020年、世界最大手のファウンドリー(半導体の受託生産を行う企業)である台湾のTSMCの工場誘致を発表。さらに21年には韓国サムスン電子の米国内の工場建設も決め、グローバルに広がっていた半導体のサプライチェーンを国内に集めようとしている。これは、中国を牽制し、一気に半導体の主権を握ろうとするバイデン政権の思惑とされている。著者は日本経済新聞編集委員。1985年日本経済新聞社入社。科学技術部、産業部、国際部、ワシントン支局、経済部、フランクフルト支局、論説委員兼国際部編集委員、アジア総局編集委員などを経て現職。著書に『プラナカン 東南アジアを動かす謎の民』(日本経済新聞出版)などがある。