

新しい市場を作り出す画期的なイノベーションは、単純な一つのアイデアだけで成り立ってはいないことが多い。複数のアイデアが統合することで、これまでにない価値を創造している。革新的なモバイル決済で、小規模商店にもクレジットカード決済を導入できるようにした米国企業スクエア(Square)のイノベーションもその一つだ。

スクエアの共同創業者が著した本書では、さまざまなアイデアやイノベーションが積み重なり、相互に絡み合いながら統合・一体化したものを「イノベーションスタック」と名付け、スクエアの他3社の事例を紹介しながら、そのメリットと方法について論じている。2009年創業のスクエアは、iPhoneのヘッドフォンジャックに挿すだけで使える、白い正方形の極小クレジットカードリーダーを開発し、簡易なモバイル決済を小規模商店でも導入できるようにした。同社は類似のサービスで市場を奪いにきたアマゾンを1年強で退けたが、その強さはイノベーションスタックの賜物だった。著者は2010年まではスクエアの経営会議会長、現在もその理事を務める。また、オンラインコンテンツの経済を再構築するインヴィジビリティ社、IT雇用に向けた研修を行う非営利団体ローンチコード、セントルイスの公共アクセス型ガラスアート加工スタジオのサードディグリーガラスファクトリーを創設している。