

企業などの組織内における「人間関係」が、業務の遂行や業績・成長に影響することは論を俟たない。働くのは生身の人間だけに、時に妬みや僻み、不満や憤りといったネガティブな感情が発生することがある。それらの悪影響を抑え、逆に活用するヒントが、組織心理学の成果から見つかるかもしれない。

本書では、「妬み」「温度差」「不満」「権力」「信用(不信感)」といったテーマのもと、組織に蔓延するネガティブな感情をいかにポジティブで有益なものに変えていくか、そのためのリーダーシップはどうあるべきかなどの問いに、心理学、脳科学、集団力学などの見地から答えている。たとえば著者自身が関わったJR西日本福知山線脱線事故後の組織調査の一環として行われた実証実験では、「ほめる」というポジティブ・フィードバックが有効に働くには条件があり、いつでも「ほめる」のが良いことだとは限らないことが示されたという。著者は立命館大学スポーツ健康科学部教授。専門は、産業・組織心理学、社会心理学。企業やスポーツチームにおける「リーダーシップ」と「人間関係構築」に関する心理学研究に従事している。