普段はあまり意識しないが、人間の活動は「冷やす」技術に囲まれている。食品の保存を始め、空調、機械製造、宇宙開発の分野でも冷却・冷蔵技術が活かされている。中でも身近なものは、日々の飲食を支える冷蔵庫だろう。だが、その恩恵を人間が享受できるようになるまでには長い時間がかかったようだ。
本書は、人工的に低温をつくり出す技術の歴史を軸に、科学者らの奮闘、冷却に対する人間の認識や社会の変化を辿る科学ノンフィクション。今では生活に欠かせない冷蔵庫だが、普及する前は食品の鮮度をごまかすとして嫌悪されてきたことや、過去の冷却装置が金星探査に応用される可能性など、冷やす技術にまつわるエピソードを幅広く紹介している。著者は、イギリスのブリストルを拠点に活動するサイエンスライター。動物園の飼育員、旅行作家、バッファローキャッチャーなどを経て、現在は雑誌やテレビなどでも活躍している。