仕事のパフォーマンスやQOL(生活の質)向上に資するものとして、知能や学力ではない「非認知能力」の存在が注目されつつある。グリット(やり抜く力)、誠実性、好奇心、共感性といった、従来「人間力」と呼ばれていたものが含まれる概念だ。これらは教育によって身につけさせられるのだろうか。
本書では、「非認知能力」の定義等について概説した後、心理学で非認知能力やそれに類するものとして研究されている、15の心理特性を取り上げ、それぞれがどのような概念であるのか、いかに測定されるのか、教育によって向上させることが可能なのかを、先行研究の成果などをもとに論じている。非認知能力は概ね、人生や仕事、教育に「よい結果」をもたらすものと定義されるが、学力や知能といった認知能力を育てる従来の教育とは異なる方法によって育まれる。たとえば、非認知能力の一つである「好奇心」は、教育のプロセスに「適度な情報のズレ」を入れることで喚起できる可能性があるという。編著者は早稲田大学文学学術院教授。博士(教育心理学)。パーソナリティ心理学、教育心理学、発達心理学を専門とする。なお、ダイジェストでは、編著者による非認知能力の概説と、京都大学大学院教育学研究科の西川一二研究員による「好奇心」の章を取り上げた。