社会における分断や孤立を解消するのに「共感」が重要とよく指摘される。英語の「empathy(エンパシー)」と「sympathy(シンパシー)」はともに日本語では共感と訳されるが、実はエンパシーには、(心情的に同意できなくとも)理性的に相手の心を読み取る知的作業という意味もあるようなのだ。
ベストセラー『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)と同著者による本書は、同書でも触れられ話題となった「エンパシー」について掘り下げている。よく混同されがちな「シンパシー」との違い、コロナ禍におけるエンパシー、“エンパシー搾取”をされないためのアナキズム(権力による支配にしばられず自由に生きることを重視する考え方)との関係などを、先行研究を引きながら考察。エンパシーは、「わたし自身を生きる」という軸が入ることで、人々の幸せに資するものになるのだという。著者はライター、コラムニスト。1965年福岡県福岡市に生まれ、96年から英国ブライトンに住む。2017年『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)で新潮ドキュメント賞、19年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でYahoo!ニュース|本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞、毎日出版文化賞特別賞などを受賞。