

暑くなると身の回りに出没する「蚊」。夏の風物詩ではあるが、刺されると痒いだけでなく、マラリアなど命に関わる病気に感染することもある。近年では、グローバルな人やモノの移動に伴う、感染症を媒介する蚊の生息域拡大が懸念されている。身近な昆虫である蚊について、どれだけのことを知っているだろうか。

本書は、世界保健機関(WHO)でも活躍した蚊対策の専門家、研究者、防虫用品メーカーなどが、蚊の生態、人間社会・文化や自然環境との関わり、蚊媒介感染症や防除の仕組みなど、蚊にまつわる知識を網羅的に紹介。最近の調査によると、航空機に乗りこんだ外国の蚊が日本国内に侵入したり、輸出品に付着した蚊の卵が外国で孵り定着するなど、蚊の移動経路も複雑かつ大規模になっているという。編著者は長崎大学客員教授、James Cook Universityプロフェッショナルリサーチフェロー。1992年から2013年までWHOに勤務し、世界リンパ系フィラリア症制圧計画(GPELF)の統括官などを務める。