バラク・オバマ氏が米国大統領に就任した2009年は、世界金融危機の直後であり、イラク・アフガニスタン情勢は混迷を極め、前年にロシアがジョージアに侵攻するなど、米国が大国として軍事・外交面で難しい舵取りを迫られる時期だった。オバマ大統領は、手探りで対処を進めながらも理想を失っていなかった。
オバマ元米国大統領が、生い立ちから1期途中の2011年頃までの出来事と自らの行動、思考を詳細に綴った回顧録の第1弾である本書(上・下巻)。下巻では、大統領就任直後のロンドンG20サミットにおける「外交デビュー」から、2011年のオサマ・ビン・ラディン暗殺までが描かれている。オバマ氏は、前政権(ブッシュ政権)のつけを背負わされ、それらに現実的な戦略・戦術で対応する一方で、チェコのプラハで核兵器削減・廃絶を訴える演説を行う。そして、同演説と「核なき世界」に向けた国際社会への働きかけが評価され、2009年のノーベル平和賞を受賞。しかし、アフガニスタンへの追加派兵を行うなど、目の前の現実は「平和」とギャップがあった。著者のオバマ氏は、大統領2期目をめざした2012年の大統領選挙で共和党候補のミット・ロムニー氏に勝利。2期8年の任期をまっとうし2017年1月に退任後、本書の執筆を始める。