ニホンウナギやクロマグロなど希少な天然資源を守るとともに、将来懸念される世界の食料不足を解消する手段に「養殖」がある。海水魚の養殖は、海の一部を囲うのが一般的で、そのスタイルは3000年前から変わっていない。だが、ある特殊な「水」を使えば、海が近くにない内陸部でも養殖が可能になるそうだ。
本書は、海水魚の「陸上養殖」を可能にする、海水でも淡水でもない“第3の水”である「好適環境水」の開発物語である。著者が開発した好適環境水は、3種類のミネラルを一定の比率で真水に溶かすことでつくることができる。この水には、海水魚を育てられるだけでなく、早く成長させ、病気から守り、味も美味しくする効果がある。著者はこの水を使うことで、火星でマグロを育て、すしにして味わう、という夢を抱く。著者は岡山理科大学准教授。三井金属鉱業総合研究所に技術者として就職した後、熱帯魚の水槽設備をあつかう会社を設立。その後、岡山理科大学専門学校のアクアリウム学科長に就任。魚やサンゴの養殖に携わり、2006年、好適環境水を開発した。2009年より現職。