書籍
発刊 2021.04
サンデル教授が語る「能力主義」のデメリット
『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
THE TYRANNY OF MERIT(2020)
マイケル・サンデル 著 | 鬼澤 忍 | 早川書房 | 388p | 2,420円(税込)
Contents

序論 入学すること
1.勝者と敗者
2.「偉大なのは善良だから」―能力の道徳の簡単な歴史
3.出世のレトリック
4.学歴偏重主義―容認されている最後の偏見
5.成功の倫理学
6.選別装置
7.労働を承認する
結論 能力と共通善

Introduction
パンデミックの対策には、国民など共同体のメンバー間の「連帯」が必要とされる。だが世界では、数年前からさまざまな「分断」が広がる傾向にある。とくに米国では、ごく一部に富が集中し、「取り残された人々」がポピュリストであるトランプ大統領を当選させるなどの現象が生じた。分断の原因は何なのだろうか。
本書では、ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)などで人気を博したハーバード大学哲学教授が、「努力と才能次第で誰でも成功できる」という能力主義(メリトクラシー)が、「勝者」と「敗者」の間の深刻な分断と対立の原因になっていることを指摘。それに米国の高等教育がどのように関わっているか、分断を解消し、より良い共同体を作っていくにはどうしたらいいのかを詳しく論じている。能力主義的な考え方が広がる米国では、「大学の学位を持たない白人」が、偏見と侮蔑の対象になることで労働の誇りを失っており、それが社会に分断による歪みをもたらしているという。著者のマイケル・サンデル氏は、1953年生まれのハーバード大学教授。専門は政治哲学で、コミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的論者として知られる。講義の名手としても知られ、日本ではNHK教育テレビ(現Eテレ)『ハーバード白熱教室』で有名になった。