地球温暖化による気候変動は激しさを増しており、米国大統領の呼びかけで「気候変動サミット」が開催されるなど、国際的枠組みでの取り組みが進んでいる。そうした取り組みのほとんどはCO2排出量削減だが、対策の進展が遅いため、直接的に気候を操るという「気候工学」の研究も行われている。
本書では、CO2を大気から回収する「CO2除去」、地球に降り注ぐ太陽光を人工的な手段で減らし地表の温度を下げる「太陽放射改変」という2種類に分けられる気候工学技術の概要、効果、危険性について詳しく解説している。太陽放射改変の中でも、特に効果が期待でき、シミュレーションなどの研究が進んでいる「成層圏エアロゾル注入」は、大規模な火山噴火で一時的に気温が下がる現象を応用。成層圏に硫酸エアロゾルなどの浮遊性の微粒子を注入し、太陽光を宇宙に反射させる技術だ。しかし、地球全体を冷却するという技術は多大なリスクも伴う。著者は東京大学未来ビジョン研究センター准教授。一般財団法人電力中央研究所社会経済研究所主任研究員等を経て現職。気候政策(モデルによるシナリオ分析)、ジオエンジニアリングのガバナンス(公衆関与)を専門としている。