福島第一原発事故から10年。徐々に再生可能エネルギーの可能性も見えてきている。日本では太陽光発電の他、水力発電も注目されている。とくに旧来の巨大ダムによる発電ではなく、全国の山間地に無数存在する渓流を利用したマイクロ水力発電である。小規模ゆえに個人でも始められるのがポイントの一つだ。
本書は、定年後、70歳を過ぎてから個人で小水力発電に挑戦した著者自身の経験をもとにした物語。主人公の青山弘光を著者の分身とした実話だという。定年の6年後、岐阜県の山間地に別荘として山荘を購入し、渓流沿いの山も手に入れた主人公は、福島第一原発の事故を知り、渓流の絶え間ない水の流れを利用して発電を行い、それが全国に普及することで、原発の代替エネルギーを賄えるのではないかと発想する。そして、地元の協力者を得て、自ら所有する土地でマイクロ水力発電を試みる。著者は、日本特殊陶業株式会社で点火プラグの技術開発に従事した後、技術部長、常務取締役自動車関連事業部副本部長、専務取締役、米国センサー株式会社社長、顧問嘱託などを歴任。現在は、技術コンサルタント、作家活動を行う。元名城大学非常勤講師、中部ペンクラブ会員。