

わたしたちは、人間が進化の頂点におり、他のどの動物よりも知能(認知能力)が優れていると思いがちだ。だが研究によれば、動物たちには種ごとに環境に応じて獲得した認知機能があり、時にそれは人間と同等かそれ以上に高度で複雑なこともある。「この動物は人間でいえば○歳の知能」などとは言えないのだ。

本書では、かけ離れた種でも類似した認知機能を持つ動物たちを調べる「比較認知科学」で行われている、ユニークな研究やその成果を紹介。記憶力、論理的判断、道徳、美などのテーマごとに、動物たちと人間との間で共通、あるいは異なる認知能力について考察している。たとえばハトは、ピカソとモネの絵画を区別するだけでなく、キュビストと印象派といった画風の違い、さらに子どもの絵の上手下手までも見分けるのだという。著者は慶應義塾大学名誉教授で、比較認知神経科学を専門とする。1995年に、本書でも紹介されている「ピカソとモネの絵を見分けるハトの研究」で、イグ・ノーベル賞を受賞した。