

「きものの日」である11月15日を中心に、毎年晩秋には各地で着物のイベントが行われる。海外から見た日本文化の象徴の一つであり、正月、七五三、成人式などの「ハレの日」の装いとして、現代でも生活に溶け込んでいる「着物」。その身体と精神、社会との伝統的な関わりは、どのようなものなのだろうか。

本書では、素材、身体への影響、作法や立ち振る舞い、経済・社会との関係など、多角的に「着物」を掘り下げている。重要な素材である「絹」は、その繊維の特質から独特の美しい光沢を生み出す。また、着物の着付の際に骨や筋肉を意識することは、筋肉の動きを活性化し、心身に良い影響を与える。さらに着物は、伝統的に「布を使い切る」習慣が根づいており、昨今のサステナビリティを求める方向性にも合致しているようだ。著者は、きもの文化研究家、きものエッセイスト、きものジャーナリストとして活躍。女性誌の編集記者を経て、きもの季刊誌『きもの秋櫻』を発行する「秋櫻舎」を設立した。農林水産省蚕糸業振興審議会委員として、国産シルクブランドの開発にも携わる。