書籍
発刊 2020.09
9.11でユダヤ教徒がムスリムを助けた理由とは
『定本 災害ユートピア』
なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか
レベッカ・ソルニット 著 | 高月 園子 | 亜紀書房 | 508p | 2,600円(税別)
Contents

プロローグ 地獄へようこそ
1.ミレニアムの友情:サンフランシスコ地震
2.ハリファックスからハリウッドへ:大論争
3.カーニバルと革命:メキシコシティ大地震
4.変貌した都市:悲嘆と栄光のニューヨーク
5.ニューオーリンズ:コモングラウンドと殺人者
エピローグ 廃墟の中の入り口
解説 レベッカ・ソルニットを読み解く(渡辺 由佳里)

Introduction
大地震や台風・洪水、あるいは無差別テロなど、多くの人命が失われる大災害に突然見舞われた時、人々はパニックに陥り、盗難や食べ物の奪い合いなどが起こると思いがちだ。しかし実際には、どんなに悲惨な状況でも人々は助け合い、絆を確かめ合う行動がしばしば見られる。それはなぜなのだろうか。
原書が2009年、日本語版が2010年に刊行され、ロングセラーとなった書籍の「完全版」である本書は、大災害が発生したときに、人々が自発的に相互扶助の秩序を作り上げるメカニズムを、多数の事例をもとに明らかにする。取り上げられるのは、1906年のカリフォルニア大地震、ニューオーリンズの巨大ハリケーン、9.11テロといった米国の災害。たとえば2001年の「9.11テロ」は、米国民のイスラムへの憎悪を増幅させたとされているが、現地では、人種の壁さえ越えた仲間意識と信頼でつながった一種の「パラダイス」「ユートピア」が出現していたという。本書にはその興味深い詳細が、ドキュメンタリータッチで描かれている。著者は、1961年生まれの作家・歴史家・アクティヴィスト(活動家)。カリフォルニア州に育ち、環境問題や人権、反戦などの政治運動に参加。『River of Shadows』で全米批評家協会賞、マーク・リントン歴史賞を受賞。