書籍
発刊 2020.09
集団間の対立を乗り越えるために何が必要なのか
『人はなぜ憎しみあうのか 下』
「群れ」の生物学
THE HUMAN SWARM(2018)
マーク・W・モフェット 著 | 小野木 明恵 | 早川書房 | 284p | 2,300円(税別)
Contents

15.大連合
16.血縁者という枠組み
17.対立は必要か?
18.他者とうまくやる
19.社会のライフサイクル
20.ダイナミックな「私たち」
21.よそ者の考案と社会の死
22.村から征服社会へ
23.国家の建設と破壊
24.民族の台頭
25.分離された状態
26.社会は必要か?
結び.アイデンティティの変化と社会の崩壊

Introduction
米中の冷戦、黒人差別、根強く残るテロリズムへの懸念など、国家・民族間の対立、特定集団への差別、あるいは集団による集団外への攻撃は、いまだ絶えることがない。また、コロナ禍により自国中心主義と国家間の分断が加速したという見方もある。こうした状況を改善し、健全な社会を築く手段はあるのだろうか。
生物学や人類学、心理学の知見などをもとに、仲間と敵を区別しがちな人間社会の成り立ちを論じ、「フォーブス」誌の年間ベスト・ブックにも選出された書の下巻である本書では、他集団を攻撃することで自集団の団結が強まるメカニズムや、同化によって社会集団間の境界線(ボーダー)や集団のアイデンティティは失われるのか、といった興味深いテーマを扱う。人間には、人と共通のアイデンティティを求める一方で、他者とはある程度違っていたいと思い、それらの中間点を求める「最適弁別性」という性質があるようだ。著者は、スミソニアン自然史博物館研究員、ハーバード大学人類進化生物学部客員研究員。「ナショナルジオグラフィック」誌に写真を寄稿するカメラマンとしても活動している。