新書・文庫
発刊 2020.08
戦前の名宰相、原敬のめざした「公益」とは何か
『真実の原敬 維新を超えた宰相』
伊藤 之雄 著 | 講談社(講談社現代新書) | 272p | 900円(税別)
Contents

序.原敬をめぐる百年の誤解
1.「朝敵少年」の維新――母・友・師の人生観
2.天津で、パリで、漢城で――外交官の日清戦争
3.部数倍増の手腕――大阪毎日新聞を経営
4.選挙は国家の公事である――政友会のリーダーへ
5.「アメリカの世紀」を予見――西園寺内閣の実権者
6.「一山百文」の公共性――山県有朋との確執
7.平民宰相誕生――世界大戦後のヴィジョン
8.「宝積」の理想――暗殺が奪ったもの

Introduction
7年8カ月ぶりに日本の首相が交代した。ここで、第一次と第二次世界大戦のはざま、現代と似た約100年前の「不安の時代」に首相の座についた原敬(1856-1921)に注目してみてはどうだろうか。日本で初めて本格的な政党政治を実現し、爵位を持たない初の「平民宰相」だった原敬は、どんな国づくりをめざしたのか。
本書は、新史料も含む厖大な史料をもとに、著者が「近代日本の最高のリーダーの一人」と評価する第19代内閣総理大臣・原敬の思想と行動を辿る評伝。鉄道敷設など公共事業に尽力したことから、地域への利益誘導的な泥臭い政治家という評価をされがちだが、その実像は、行き詰まり感のある時代に的確な将来予測とビジョンを持ち、真の「公共性」を実現すべく努めた道徳意識の高い宰相だったようだ。著者は歴史学者で、京都大学大学院法学研究科教授を経て、現在は京都大学名誉教授。『原敬―外交と政治の理想』『伊藤博文―近代日本を創った男』(いずれも講談社)など多数の著書がある。