腕時計などのガジェットは、高級ブランドを除き、今は中国などの海外生産がほとんどになっている。ところが、部品やベルトも含め「国産」にこだわり、しかもカジュアルな価格で提供し、若者を中心に人気を集める腕時計メーカーがある。東京・吉祥寺で2014年に創業した「Knot(ノット)」である。
本書は、腕時計の生産販売を手がける「Knot」の創業者で現・代表取締役、遠藤弘満氏を主人公とするビジネスノンフィクション。海外腕時計ブランドの輸入販売を手がける会社の社長として、デンマークのブランド「スカーゲン」の代理店業務で成功していた遠藤氏は、突然、同社の大株主から社長職を解任される。それを機にオリジナルの時計ブランドづくりを始めることになる。「結ぶ」を意味する英語の「Knot」と名づけられたそのブランドは、ネットや実店舗で若者を中心に絶大な支持を集め、現在は吉祥寺を拠点に、国内11、海外5店舗のギャラリーショップ、国内3店舗のコンセプトショップを展開するに至っている。著者は、日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日本経済新聞編集委員等を経て2019年に独立したジャーナリスト。著書に『失敗の研究 巨大組織が崩れるとき』(日本経済新聞出版)などがある。