将棋界の話題といえば、藤井聡太棋聖の史上最年少でのタイトル獲得だろう。一方で、2019年9月に46歳という「史上最年長」で初タイトルに輝いた棋士がいる。木村一基王位である。その戦い方から「千駄ヶ谷の受け師」と称され、苦節の後の快挙から「中年の星」と親しまれる木村王位。どんな人物なのか。
本書は、棋士・木村一基王位の生い立ちから初タイトル獲得までを追ったノンフィクション。自ら積極的に攻撃を仕掛けるのではなく、相手の攻撃を“受けて”、防御しながら反撃するというリスクの高い戦法で勝負し、何度負けても諦めず、粘り強い将棋を指し続ける木村王位の姿勢からは、仕事や生き方に、多くのヒントが得られることだろう。木村王位は、2020年の王位戦では、藤井棋聖の挑戦を受けて、タイトル防衛に臨んでいる。著者は、中日新聞東京本社(東京新聞)文化芸能部の記者。将棋の他に文芸、囲碁、クラシック音楽を担当してきた。なお、文中に登場する各棋士の段位・タイトルは、すべて2020年8月7日現在のものである。