格差や環境問題など、常に「成長」を是とする資本主義経済の歪みや限界がしばしば指摘される。では、現代資本主義のどこに問題があり、それをどう解決すれば持続可能な社会を作っていけるのだろうか? それを考えるためには、世界を動かしている現代経済の「本質」を理解しなければならない。
本書では、現代資本主義経済の本質を直観的につかめるよう、さまざまな具体例を挙げながらわかりやすく論を展開している。特にこの十数年の資本主義経済の動きを、主に量子力学で用いられる「縮退」という用語を使い分析。伝統社会が保っていたバランスが壊れ、巨大企業という強者が弱者を呑み込む過程で世界の富が引き出されているが、それが社会の質の低下を招いていると指摘している。著者は、組織に属さず仲間とともに研究生活を送る物理学者。1987年、自費出版『物理数学の直観的方法』(通商産業研究社。その後、ブルーバックスより普及版が出版される)によって、理系世界に一躍名を知られる。