社会が持続的に前進していくには、これまでにない新たな「ものの考え方」を獲得する「知的創造」を途絶えさせてはならない。知的創造を可能にする社会やメディア環境は時代とともに変化してきた。とくにインターネットやAIが登場した現代における、知的創造の条件はどのようなものなのだろうか。
本書では、著者自身の経験、大学という場での知的創造の方法、図書館やネット社会と知のあり方、そしてAIと知的創造の関係などをテーマに、多角的かつ原理的に「知的創造」の条件を探っている。人間の知的労働を代替すると目されるAIは、大災害や大恐慌、戦争といった突発的で日常から非連続、予測が難しい事態に対し無力であり、そんな時こそ、人間による知的創造が必要になるのだと論じる。著者は、東京大学大学院情報学環教授で、社会学・文化研究を専門とする。『都市のドラマトゥルギー――東京・盛り場の社会史』(河出文庫)、『夢の原子力』(ちくま新書)、『ポスト戦後社会』(岩波新書)など著書多数。